「エラーしたのはお前だけじゃない」

2016月08年09日

 

Rioオリンピックとともに甲子園も始まりました。

 

もしかして40年前?私が高校球児の頃って…

当時の野球部チームメイトの矢田憲二くんと再会したときのことです。 彼は、5番を打つ強打者でありながら、左腕のリリーフ投手でもありました。 現在は大手石油会社の課長さんです。

我が母校、近大福山高校野球部は、OBに元ロッテの村田兆治さん、元ヤクルト→元巨人の浅野啓司さんがいらっしゃいます。

新橋の焼鳥屋さんで酒を酌み交わし、高校時代の思い出に花を咲かせました。 ほとんど、おやじ丸出しの会話。誰が見ても、やさぐれおっさんの飲み会となりました。 実は・・・

高校の野球部時代のチームメイトに会ったら、みんなに謝りたいことがありました。

大人になった今でも夢に出てくる辛くて苦い思い出。今でも一つのプレーが悔やまれ、私の脳裏から離れません。人生を変えた大失策とさえ思うことがあります。 私は、いつかチームメイトに会ったら、みんなに謝ろうと30年間思い続けてきました。

それは・・・

2年生となり新チーム結成、不肖高山が主将に選ばれ、春の選抜大会の県予選に臨んだときのことです。

順調に勝ち進み、準決勝の強豪広島商業戦。6回まで0対Oの緊迫した接戦が続いていましたが、7回にノーアウト満塁のピンチをむかえたのです。

強豪相手の投手戦、一つのミスが勝敗を分けます。ナイン全員が緊張のピークでした。そのとき三塁手の私のところに絶好のダブルプレー向きのゴロが飛んできました。 「ヨッシャッ!」と思った自分の気持ちとは裏腹に緊張で肩に力が入ってしまい、 ホームに暴投ダブルプレーどころか、最悪のタイムリーエラーをしてしまったのです。

捕手も呆然、内野手も全員が呆然と立ち尽くしていました。スタンドから「ウォー」という轟音のような歓声で、我を見失い、白球がファールグランドを転々と転がるのを全員がボーッと眺めている・・・ その光景が、今でもはっきり私の脳裏に焼きついています。 気がついたら、塁を埋めていたランナーたちが私の目の前を凄いスピードで次から次へと通り過ぎ、ホームに走り去っていきます。

監督がグラウンドに飛び出し「ボールを追え!早くボールを!」という大きな声に気づいたときには、三人目がサードベースを回っていました。

結果は1対7で敗退。同時に春の甲子園の夢も絶たれました。

私のエラーで負けたのです。

しかし、、、 試合後のロッカールームで自分自身を反省した記憶が無いのです。 チームメイトに「俺が悪かった・・・ごめん」と謝罪した記憶が無いのです。

私は大人になって初めて、みんなに謝っていない自分に気づきました。 あのとき反省すらしなかった自分に、社会人になって初めて気づくのです。

今でも、年に数回あのシーンを思い出します。昼も夜も、もちろん仕事中もです。 その度に、 なんで謝らなかったのだろう・・・ オレって、勝手なやつだよなあ・・・ 人の気持ちを思いやれない、ひどいやつだなあ・・・ みんな怒っているだろうなあ・・・ あのエラーがなければ甲子園に行けたかもしれないのに・・・ 甲子園に行っていたら、みんなの人生も変わっていたかもしれないのに・・・

社会人となり、管理職になって「謝れない上司「人の気持ちを思いやれない上司」と言われたことがあります。経営者になった今も「社員の気持ちがわからない社長」「もっと、自分たちを見てほしい、愛してほしい、愛が足りない社長」と言われることがあります。

その度に、このシーンを思い出すのです。 謝れなかった自分、チームメイトを思いやれなかった自分を思い出し、高校時代から成長していない自分にとても悩んでしいました。

その通りだよなあ・・・ あのときみんなに謝れない男だもんなあ・・・ 彼らの悔しさがわからない男だもんなあ・・・ オレは俺しか見ていない男かもしれない・・・ 俺って、ほんとうに勝手なヤツだなあ・・・

ずーっと、そのことに悩み、後悔し続けてきました。

いつかわからないけど、チームメイトに会ったら、一人一人に自分のエラーを謝ろうと、心に決めていました。

飲み会も終わりに近づき、矢田くんに聞きました。 「広島商業戦覚えとる?あれ勝ったら神宮大会出場で甲子園が見えたのにのー」 「あー」 「わしのエラーで負けてのー」 「はあっ!?そんな昔のこと覚えとるんか!?」 「大人になっても、あのことは忘れたことがない・・・」 「高山!みんなエラーしとる、お前だけがエラーしたわけじゃない。わしもいっぱいエラーした。お前にも助けられた。わしも、いっぱいみんなに助けられたけん」 「いやー、わしキャプテンじゃったし…みんなに謝らんかったことを後悔しとるんよ」 「高山、エラーしたのはお前だけじゃない

私は、この言葉に胸が熱くなり、次の言葉に詰まってしまいました。

同じ涙と汗を流した彼らとの3年間、野球ができてよかったと思いました。矢田くんをはじめとするチームメイトたちと同じ釜の飯が食えて本当によかった。

それは、私の40年あまりの胸のつかえがスーっと消えた瞬間でもありました。 「エラーしたのはお前だけじゃない」

私の人生の中の貴重な一言、そして忘れられない言葉となりました。

「俺は一人じゃない」

そう思えた瞬間だったからです。

矢田! ほんとうにありがとうのー。

会えてよかったわい、 謝れてよかったわいや。

近畿大学付属福山高等学校 野球部主将

高山 直~!ってか…

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